超ルーズ戦略で領土問題を解決する

日本の外交問題のひとつとして、北方領土竹島尖閣諸島などの領土問題がある。これを解決する (戦争以外の) 唯一のソリューションは、「当事者の誰もがその言い分を通すことのできず、全員にとってひとしく不利益であるような」ものである、と 真栄平先生とアジアについて語る - 内田樹の研究室 にある。このような解決戦略を指して内田さんは「ウィン=ウィン」ならぬ「ルーズ=ルーズ」ソリューションと呼んでいる。では実際の領土問題において、どのような政策になるのか、を考えてみた。

実際に考えてみてまず思い至ったのが、「ルーズ=ルーズ」ソリューションは利害が対立する二者だけでは成立しないのではないか、ということだ。そこには、もうひとりステークホルダー必要なんではないだろうか。しかも、その第三のステークホルダーは、利害が対立している二者よりひとつ高い視点から争いごとに介入する。「三方一両損」にしても、「三人吉三庚申塚の場」にしても、そういう構図になっている (単位未修問題であちこちからコメントを求められる - 内田樹の研究室)。争っている二者の間にわざわざ損を買ってでるのが大岡越前であり、和尚吉三である。そうすると、「ルーズ=ルーズ」ソリューションは正確に言うと、「ルーズ=(ルーズ=ルーズ)」ソリューションと言えるのではないだろうか。ここでは、利害が対立している二者と、それよりひとつ上のレベルから介入する第三者がいる、ということを表現している。三番目の立場がひとつレベルが上、ということで「超ルーズ=(ルーズ=ルーズ)」、それを完結に「超ルーズ」ソリューションと呼んでみたい*1

具体例として竹島を取り上げてみる。韓国と日本、という二者間で「当事者の誰もがその言い分を通すことのできず、全員にとってひとしく不利益であるような」ソリューションはすぐに思いつかない。両者が所有権を放棄するとしたら、ではどこの国の領土なのか、という問題が生じてしまう。あえて第三の立場を持ち出さないのであれば、竹島を二分し、互いに自国から遠い方を領土とする、としたらどうだろうか。お互いに不便なことこの上なしである。便宜的に、この案を「あっち側がこっち」案と名づけておく。

とここまで考えてみると、やはり、第三のステークホルダーが介入するほうがよいように思われる*2。つまり、「じゃあ君達、竹島は我が国の領土とすることで手打ちにしないか」とどこかの国が名乗り出してくれるのがよさそうである。その国は、竹島を領土とすることでメリット (天然資源、安全保証上の優位) が生じてはいけない*3。メリットが生じてもいいが、竹島を得ることで得られるデメリット (資源を「本国」に持っていくコスト、「本国」から軍隊を派遣するコスト) のほうがはるかに大きくなければならない。たとえば、ルクセンブルクとかはどうだろう。この解決方法が成立したのち、もし、日本ないしは韓国が竹島を占拠しようとした場合、これは NATO 加盟国への侵攻となり、NATO から攻撃の対象となる *4。国際社会からの批判も一身に浴びなければならない。そんなリスクはおかせないだろう。これが当事者間の「あっち側がこっち」ソリューションが覆された場合は、単に日本と韓国だけの問題である。国際社会から見たら対岸の火事であり、(戦線が拡大しない限り) 「勝手にやってれば」状態だろう。

さて、介入した国は、竹島を得ても、経済面や安全保障面ではデメリットが上回るわけだが、それらの側面より一つ上のレベルで得られるメリットがある。それは国際社会における尊敬と信頼である。国際平和に資する姿勢、自ら損害を引き受ける口先だけではない平和への貢献、に対する賞賛である。

で、本題である。私の提案は、日本が日本の領土問題を解決するために、他の国の間の領土問題に「超ルーズ」に介入していく (介入していき続ける)、というものである。日本にとっておよそメリットのない紛争地域に、「じゃあ君達、ここは日本の領土にすることで手打ちにしないか」と名乗り出るのである。手打ちが成立するためには、日本にとってデメリットが大きいことが当事者にあきらかになっていなければならない。デメリットをあきらかなくらい大きくするためには、そこに植民し、行政上のコストもかかるようにしたほうがいいかもしれない。一旦この介入が成功した場合、その地域を侵した勢力は、アメリカから攻撃対象となることを覚悟しなければならない (その地域は日本の領土なわけだから自衛隊を派遣しても違憲にはならない。しかし、米軍を駐留させてはいけない。そうすると日本にはメリットはなくても、アメリカにメリットが生じてしまい、「超ルーズ」ソリューションが成立しない)。このような介入をしていくことで、日本は国際社会の中で尊敬される国となることができる。また、このような「超ルーズ」ソリューションが国際紛争を解決する手段として有効なことを示すことができる。そこでようやく、どこかの国が「じゃあ、うちが一肌脱ぎましょうか」と、日本自身が抱える領土問題に介入してくれることが期待できるわけである。

私は日本が国際社会から尊敬される国であってほしい。このような平和貢献だったら、国民として支持する。そのために税金を払ってもよい。そこに住む人間が必要なら、そこに移住するというかたちで貢献してもいいくらいだ (なんせ国内だし)。

*1:超ルーザー ? メタルーザー ?

*2:対立しているのが三国ならば第四のステークホルダーになる

*3:これをもって漁夫の利という。二者が納得するわけがない。

*4:NATO が絡むと竹島の安全保障上の重要度が違ってくるかもしれない。ので、そういう場合はルクセンブルクじゃなくてスイスとか、コスタリカとか。