自主的取組みで給与を得ようと画策する修行

人を巻き込む

私自身は元々穴掘り好きで人柱系なので、自分の時間の持ち出しで業界の情報収集、各種ツール/個別技術の試用/導入することは苦ではない。
しかし、そういう自主的な取組みに、周りを巻き込むことには成功したとは言いがたい。自分がやっていることのアピールをしたり、勉強会やコンテストを企画したりして、社員全体の IT スキルの向上、自主的で活発な社風の構築を目指していた。これがなかなかうまく行っていなかった。いや、失敗し続けてきたと言ったほうが正しい。組織人としては他の人もどんどん巻き込んでいかなければならないのだろうが。
自主的な活動に人を巻き込もうとしたときにネックになることのひとつが、「で、その活動は業務時間に含まれますか?」と問われることである。その問いには「入りません。」と答えるしかない。「興味はあるけど、業務時間に入らないならやめます。」と、そこで話が止まってしまうのはもったいない。自分に投資した分は間接的に給与に働くはずである。実際にスキルアップによって上がった作業効率や、自主的な活動を行う積極的な姿勢をアピールすることで、ボーナスやベースアップ、何らかの一時金につながるはずである。

企画書はどうか

この問題に対し、今までは、自主的な活動の企画書を提出してそれに予算をつけてもらうことを考えていた。そういうお墨付きがあれば、「で、その活動は業務時間に含まれますか?」に対して、「週に N 時間分までは業務時間に入ります。」と答えることができる。
で、この方法が成功したかと言うと、否である。企画書を作る時間がないのである。当然、その企画を認めてもらうために、意義をまとめたり、作業規模や収益の見積もりを出さなければならないが、その時間がないのである。こんなことをやってみたい、というアイディアは熱いうちにアウトプットしないと冷めてしまう。なぜ冷めるかというと、次のアイディアが浮かんでくるからである。アイディアの湧き出るスピードに企画作成処理が追いつかないのである。そうなるとどうしてもやりたいアイディアは自分ひとりで進めてしまう。完全に冷めて死蔵されてしまうアイディアも多い。

興衆という解

アイディアは熱いうちにアウトプットし、それに人を巻き込み、場合によっては自分はアイディアを量産するだけで、活動自体は他の人に任せてしまうこともできるような、そんな仕組みを考えてみた。とりあえず、名づけ好きな私は、勉強会とかワーキンググループとかサークルとか、そういう既成の概念とは違う取組みのスタイルに「興衆(こーしゅ)*1」と名づけてみた*2

ここでわざわざ言葉を作ってまで規定してみたい興衆とは何か。一言で言うと、労働者が自分のやりたいことを自主的に行って経営者からお金をもらうための集まりである。特徴を挙げてみる。

  • 労働者が自主的に行う
    • 興味があること、効率アップにつながるアイディアなどがある人が自分で始める。
    • 誰かに任命されるわけではない。
    • 人に参加を勧めるのは自由だが、参加するしないは個人の責任において決める。(誰々がやれって言ったからやった、ということは言ってはいけない。)
  • 業務とは認められない。
    • 興衆の活動は業務としてカウントされない。
    • 興衆の活動のせいで通常業務の効率が下がったとしても、査定者はそれを考慮しないし、考慮すべきでない。単純に通常業務に対する怠慢とみなすべき。
  • ある組織内すべて、あるいはインターネットすべて対してオープンに活動する
    • 基本的に誰でも参加可能
    • 誰が立ち上げてもよい
    • 興衆の成果物(議論の中身、文書、ツール類など)はできるだけオープンにする
  • 会社のリソースを一部利用することは認められる
    • 端末の利用、ネットワーク大域、ディスク容量、光熱費、オフィス代など、興衆活動の有無で大きく変わらないリソースについては無償で使える
    • ドメインサービス、サーバの CPU リソース、IP アドレスなどのリソースも安価に借りられる。もしくは無償で使える。
  • 興衆の活動をレポートし、経営者に評価してもらう
    • レポートのタイミングはいつでも構わないが、レポートするまで活動は報われない。
    • レポートはできるだけ定量的に行う。
      • 産み出した価値、導入することによって削減された(される)コスト、など具体的な金額を示す。
      • その興衆の参加者の寄与率(全員の合計が 100 %)を興衆内の協議により決めておく。
    • 経営者はレポートに対し評価を行う。評価は公開されなければならない。
      • 経営者はその興衆の活動の成果を買い取れる金額を示す。
  • 興衆の参加者は、興衆に対する経営者の評価と、興衆への寄与率に応じた給与を得る
    • 経営者は興衆に対する評価と寄与率に見合う給与を与えなければならない。
    • 一時金、ボーナス、ベースアップどれになるかは各人の交渉による

このように、興衆はその定義上、企業内の活動であり、その点で単なるコミュニティとは異なる。また、職種や職務と関係なく、その点で社内のワーキンググループとは異なる。早い話、あらかじめお金をもらえないなら、実際にやってみせてそれに対するお金をもらおう、というものである。副次的な作用として、スピード感を持った自主活動が行えると考える。

なお、興衆の活動に対し、経営者が低い評価をしたとすれば、それは会社にその興衆の活動があまり求められていないことだった、ということになる。そこで憤慨するのは自由だが、より建設的なのはその成果を別の会社に売る、もしくは興衆のメンバーで事業体を立ち上げることである。また、正当に評価されないと感じたら、それは自分達のアピール不足の可能性も考えるべきである。

目標

自分の会社で一年以内に 30 の興衆を立ち上げる目標を立てている。会社全体としては 50 が目標である。すなわち、興衆の考え方を会社に浸透させ、自分以外の人が 20 個の興衆を立ち上げ、活動することが目標である。

興衆の由来

書き忘れてた。「興」には interesting と establish (むしろ venture か) の意味を含ませている。「衆」は個々の特別でない人の集まり、「若い衆」って感じの「しゅ」。そのままだとなんか固い言葉っぽいので、「こーしゅ」ってひらがな書きもいいかなぁ。

*1:2008-05-27 現在、Google 先生は「興衆」という字面をいくつかご存知のようだが、文脈上ここで造った語と混乱しそうなものはなさそう。

*2:すでにこれに相当する用語があるかもしれない。それならそれを使えばいいが、今のところ知らないのでご存知の方があればご教示いただきたい。