桜の花を落とす現行犯

桜の木の下を歩いていると、桜の花が花の形を保ったまま落ちてくることがある。花弁がそのまま残っているので空気の抵抗を受けゆっくり落ちてくる。ほとんどのものはくるくると回転しながら落ちてくる。春の風に乗って軽やかに舞う花を手で受けとめる遊びが好きだ。昨日も今年初めて手に花を受けてひとりはしゃいでいた。

が、この現象は雀による荒っぽい狼藉の結果なのだ。うるさくてがさつな印象のあるヒヨドリだが、花の蜜を吸うときはひとつひとつの花にくちばしを突っこんでいく。体に対して小さな花を忙しくめぐる姿はいじらしくもある。ウグイスは桜が似合う体の大きさで、花の蜜を吸う姿もいい絵になる。問題は雀だ。やつらは花の蜜を吸うなんて丁寧なことはしない。蜜のある花の根本を外からかじるのである。雀にとって桜の花自体は愛でる対象ではなく、蜜だまりの上についている余分なものである。根本がかじられた結果として花自体は木から離れ、重力と風の力を受けてくるくると舞いながら落ちてくるのである。桜の花がくるくる舞い落ちてくるのをきれいだ、楽しげだ、と下にいる私は楽しんでいるわけだが、見方を変えれば、頭上で行われている宴会の席から絶え間なく生ゴミが降ってきているようなものである。

目的のために手段を選ばない荒っぽい雀の行状だが、荒っぽさでいうと東工大の代名詞ともいえるワカケホンセイインコの方が数段上だ。やつらは十数房ほどの花がついた枝を折って花をむしゃむしゃと食べる。でもって、全部きれいに食べるわけでなく、適当に食い散らして次の枝を折りにいくのだ。雀がフライドチキンの骨を落してくるようなものとすると、インコは幕の内弁当から適当にちょこっとつまんでは残りを捨て、また次の弁当に手を出すといったところだ。