「クサい」という褒め言葉

私とつれあいの間で、野菜に対する「クサい」は褒め言葉である。野菜そのものが持つ風味がしっかりしている、損なわれていない、ということを表わす賛辞である。「うわーニンジンクサい」とか「いや、このオクラ、オクラクサいね」とか使う。
最近はクサくない野菜が多い。クサくない料理が多い。灰汁とクセは近い。灰汁を抜きすぎると、その野菜らしさも損なわれる。クセのない味に仕上げると、らしさが失われる。味を濃くするとらしさがわからなくなる。

ニンジンはクサくなくなった。甘くなった。長年の品種改良の努力の成果だろう。でも、それによって我々は何を失ったのだろう。いまややたらなんでも甘くなっている気がする。「おいしい」は「甘い」なのか。「おいしい」は「クセが少ない」なのか。

私はクサい野菜が食べたい。

でも、甘いのはおいしいよね、と思ってしまう私もいるけど、それは内緒。