2008-10-28の読みさし

斜めにのびる建築―クロード・パランの建築原理:100%

斜めにのびる建築―クロード・パランの建築原理

斜めにのびる建築―クロード・パランの建築原理

1970 年にフランスの建築家 Claude PARENT が著した "VIVRE A L'OBLIQUE" の訳本。

いやー、面白かった。建築にも門外漢な私だけど、水平とそのちょっとした拡張である垂直で構成される生活空間、都市構造をバッサリ斜めに切っている、その姿勢がすばらしい、と思えた。自分が、いかに水平と垂直のパラダイムに縛られているかを思い知らされた。居住と交通の分離、階段への批判、などもなるほどなあ、である。

私としては、斜めが産み出す、身体感覚の回復、そして、<共> 的空間の発生、が特に興味深かった。こんな都市に住んでみたい。50 歳までに 150 兆円くらい資産がたまったら作ってみようっと。

生物多様性はなぜ大切か? (地球研叢書):100%

生物多様性はなぜ大切か? (地球研叢書)

生物多様性はなぜ大切か? (地球研叢書)

なんとなく話題に出てくるけど、さらっと流されがちな問い、「生物多様性はなぜ大切か?」に正面切って答えようとする書。よい。すごくよい。いやーいろんな人に読んで欲しい。まずは農や食について、日ごろからいろいろ考えている人に。賛成派であれ反対派であれ、グローバリゼーションに興味を持っている人に。エコとか興味ある人に。高校生から読めると思う。欲を言えば中学生にも読んで欲しい。

図書館で借りて読んだけど、人に貸すために買っちゃおうかと思っている。つれあいはパラパラっと見て興味を持てなかったみたいだけど、買っておいて是非読んでもらおう。この本にしろ、誰もが知っているはずなのに誰も考えなかった農のはなし (ASAHI ECO BOOKS)にしろ、思いがけず「いい本」に出合えるから図書館通いはやめられない。

第1章では、最初に生物多様性とは何か、なぜ大切なのか、なぜ難しいのか、が書かれている。私は「農」的な観点から、ついつい遺伝的多様性にばかり目がいっていたが、「生物多様性」=「生物学的多様性」=「生物学的なさまざまなレベルでの多様性」であることがわかって得心した。換言すれば、遺伝子の多様性、種の多様性、生態系の多様性、などを包括的に指し示す用語である。
第2章では、ヒトの雑食という食性から、生物多様性が種の存続に不可欠な要素であることを論じている。第3章は、生物一般の遺伝的多様性の議論と、その文脈におけるヒトの遺伝的多様性の位置づけについて論じている。
第4章は文化的多様性の必要性について論じている。これは私にとっても最近ホットな話題である。すなわち、グローバリゼーションの広がりや貨幣経済一辺倒な思考傾向により、多様な文化が消失しつつあることへの懸念である。なぜ懸念しなければならないのか、が自分でもわからないままにもやもやとした「何かがおかしい」感だけを持っていたが、本章ではそれを「人類の存続のために必要なものだからだ」とはっきりさせている。わかりやすい。また、「私自身、その考え方からは自由になっていると思い込んでいた文化進化論というスキーム」からまだまだ抜け出せていないことを知らされてしまった。「どこどこって最近、ようやく汲み取り式便所じゃなくなったんだよね。」という発言に、違和を覚えたことはなかった。おそろしい文化進化論の罠である。

あと、この本はいろいろ痛快なところがあるが、いちばん痛快だったのが次の一節。

一個の独立国として食料自給率をある水準にまで高めるのは当然のこととして、いまの日本が食料自給率を高めなければならない最大の理由は、食料安保などという「生やさしい」ところにあるのではない。

食料自給率を安全保障のコンテキストでしか語れない若者達、君達は何を見ているのかな。